代表取締役 宇井吉美(2019年)
代表取締役 宇井吉美
───宇井さんは会社に勤めずに起業されたわけですが、仕事環境についてどのように考えられていますか?
私自身がこれまで何かに縛られることなく好きに働いてきたこともあって、それぞれが好きなスタイルで、よりパフォーマンスできるかたちで働いて欲しいなという想いが強いです。フレックスや在宅勤務はもちろん、例えば夜に働きたいという人はそれでもいいと思っています。正社員を深夜に働かせることには法律上のハードルもなくはないのですが、工夫を重ねてやっています。
───正社員以外だとどういう関わり方があるのですか?
基本的には役員、正社員、パートナーという3つのレイヤーがあります。外部のパートナーの方の中には、私ですら2回しか対面で会ったことない人もいます(笑)。エンジニアの方の場合は、テレビ会議でのやりとりで十分だったりするので、地理的な制約からも開放されてよりabaに多様性が生まれていますね。
───ビジョンを大切にしている会社として、密に会っていたほうがニュアンスが伝わることもありそうですが。
私自身はもともとは対面主義なので、会ってじっくり話したかったりするのですが。私個人の思いと会社のビジョンとしての判断は切り分けないといけないなと思っています。「支えあいが巡る社会をつくる」というビジョンがあるので、より支えあいが巡る方を選択するという判断基準に立ち返るようにしています。ビジョンが私の上司だという感じで働いていますね。
───宇井さん自身はどのような働き方をしていますか?
一応9時に出社はしていますが、オンとオフもそれほどなく。というか、一日の中でも細切れなオンとオフがある感じですね。霜降りワークスタイルとでもいいますか(笑)
起業家には、起業家になりたくてなった人、経営自体が好きな人、やりたいことをやるために経営者になっていた人という3つのタイプがあると思うのですが。私は完全に3つ目のタイプなので、仕事をあまり仕事と思っていないかもしれません。
───社長が忙しく働いていると、社員へのプレッシャーになったりしませんか?
確かに社長としての自覚を持って、行動や発言をしないとなとここ数年で思うようになってきました。会社のメンバーが増えるにつれて、“社長”が言っていると受け取られることが増えてきまして。よくニュースになっているパワハラなどの問題もそうですが、自分の発言が相手に脅威を与える可能性もあるということを考えて、客観性を持って振る舞わないといけないですね。
───自主的に動いているメンバーが多いと思いますが、どのように会社の文化をつくっていっているのでしょうか?
会社のビジョン・ミッション・バリューに心から共感できる人を採用するようにしています。そうでないとお互いにとってよくないかなと。
私自身も自分の好きなことは一生懸命できるんですけど、自分の能力でうまく解決できない場合はスタックしがちでして(笑)。そういう時に、自然と支えあえるメンバーが増えてきていて嬉しいです。
───きっと、宇井さんは放っておけないタイプの経営者ですよね?(笑)
私にも至らないところがたくさんあるのですが、「完全にこいつの情熱に負け続けている」と創業メンバーの谷本にはよく言われています(笑)
スティーブ・ジョブズが初代のiMacを開発するときも、外側の箱だけ試作していろんな部署に理想を語っていたみたいなんです。ジョブズの場合は時空が歪むほどの熱量があったそうなんですが(笑)
そうやって理想をどんどん語っていくことも経営者の大切な仕事だなと実感してきました。
───今思い描く理想はどんなものがありますか?
排泄センサー「Helppad」が最終的にはシップになったらいいなと思っています。今はまだどうやってそれを実現できるのか具体性はないですが、それくらい存在感のないものにしたいなと。
とはいっても、アメリカでは非接着で充電する研究も進み、ドローンが飛び続けられる部屋というのも実現するくらい電力送信の技術の進歩しています。そう考えると、私たちの理想ももっともっとアップデートしていかなくてはいけないかもしれませんね。
聞き手:柳瀨武彦
撮影 :小澤明子